キスと書くとびっくりな感じですが、スペイン語ではベソ(beso)と言います。以下ベソで。
ベソと言うとまあそりゃピンからキリまであるわけですが、こっちでは一般的には挨拶でかわされる、頬にするものです。
正確に言うと頬にベソはしてないんですよね。ほっぺた同士をくっつけて、チュッと口で音を立てるんです。で、ウルグアイではベソは1回です。
と言ってもそれは人によりますかね、人によってはほんとにほっぺに唇を付けてチューをくれるのが習慣の人も居れば、相手と状況(すごく親しいとか、すごく親愛の情を示したいとか)という時に、そうする人も居たり。
そしてこのベソ、なんせ「こんにちは」に匹敵するような挨拶なので、するのが当然です。
ですので、1対1で会うときは「Hola!」と1回やればおしまいですが、まとまった人数の集まりの時はかなり面倒くさそうな光景が繰り広げられます。→その場に居る人、全員にするんです。なもんで、「Hola(チュッ)」 、「Hola(チュッ)」 、「Hola(チュッ)」...(以下人数分)。てな感じです。
男同士であってもします。挨拶ですんで。だからサッカーのウルグアイ代表もゴツい男性同士でチュッチュしてますよね。
でも男性同士のベソの習慣の無い国から(ラテン以外のヨーロッパ、北米やアジアも然り)ウルグアイに来た男性はこれに馴染むのはかなり大変そうです。頑なまでに握手を貫いてる人も少なくないですかね。
メールでも文面の最後は『Un beso』『Besos』とつけるし、電話ももちろん「ベソ〜」と口頭で言って切ります。SkypeやFacebookのビデオチャットとかでも、画面越しに投げキッスです。いやいや、なかなか徹底しています。
さて、郷に入ったこちらの場合、まあ慣れてくるとそれなりに自然にできるようになるんですが、日本人の感覚では「『こんにちは』も言った事だし、なにもわざわざベソまで」な感が抜け切らずにたまにサボるのですが、そうするとウルグアイ人との間に認識のギャップが生まれる事が有ります。
前述の通り、ベソは挨拶なので、ベソで挨拶をしないとウルグアイ人にどういう風に受け取られるのかというと「うーん、感じ悪いとまでは行かないけど、シンパティカ(気さく・親しみ易い)じゃ無い子だな、とは思う。逆に言うと、ベソで挨拶しに来てくれると、あら、シンパティカな子じゃないって思う訳よ。あと、ベソ無しで挨拶されちゃうと、なんか距離を置きたいと思われるような事しちゃったかしらん?とか考えちゃうかな。」だそうで。このくらいベソでの挨拶は浸透してるわけですよ。
喧嘩をしてもベソで別れるのは大切。ウルグアイ人と喧嘩して、相当険悪な雰囲気になってあーもう帰るわと踵を返した途端に『ちょっとちょっと、ベソ。』と注意されて「あ、この雰囲気でもそーなんすか。」とベソした事も何度もあります。
別の子が職場の感じ悪い上司について「私らに朝会っても「Hola〜」って集団に投げキッス一つだけでさっさとオフィスに行っちゃうんだよね。」と語ってた事もあり、わざわざ近づいてベソして挨拶、というのは親愛の情を示すのに結構大切である、と言う事が伺えます。
もちろん、職場の仲間と言えど距離感や雰囲気は職場によっても様々でしょうし一概には言えませんし、パーティで全然知り合いじゃない人には紹介されない限りベソで挨拶を仕掛けないし、あまりに人数が多過ぎる場合や急いでる場合はその旨を言った上で(この言い訳が大切らしいですが)、投げキッスで挨拶を一度に済ませる事だってあります。
さらに明らかに外国人の場合は、文化の違いを考慮して多めに見ては貰えるんですが、とは言え、いつもそうしてもらえるとは限らず、うっかりベソを忘れて帰った日には、人によっては上記のような印象を持たれちゃう事もあるんですよね。
と言う事で、単なる習慣と片付けるには奥が深すぎるベソ、最近ようやく欠かさぬようにせねば、と実感出来てる次第です。
個人的には可愛い習慣だし、他人に対して親近感が沸くいい習慣だと思うんですよね。喧嘩をしててもほっぺをくっつけてベソした相手には、もうそれ以上怒る気も何となく沸かなくなりますし。
あ、その一方で、ベソで挨拶する機会を女子に触る絶好の機会と思って必要以上にねっちょりべっちょりで唾液が糸を引きそうなベソやハグをして来る輩も居るので注意。どこの世界にもこういう人はいるもんですね。
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